第6回聖書動画コンテスト最優秀賞作品『To my Sister』
制作者 CALM Creative team(中村恵久さん・角谷隼人さん)
中村恵久さん受賞後インタビュー(2022/3/1 zoom収録)


CALM Creative teamの中村恵久さん
CALM Creative teamの中村恵久さん
CALM Creative teamの角谷隼人さん
CALM Creative teamの角谷隼人さん

※THIRD PLACE WORSHIP:
超教派ミニストリー「Third Place」から派生した、所属する教会、教団・教派も異なる20〜30代のミレニアル世代により構成される賛美グループ。「THIRD PLACE WORSHIP」の名前の由来は、1st家族、2nd所属教会、そして「3番の場所」として。楽器演奏者のみならず、ミックスエンジニア、ビデオグラファー、デザイナー、プランナーなどのクリエイターも参加しているのも特徴の一つ。中村恵久さんはベース楽器を、角谷隼人さんはドラム楽器を、作品『To my Sister』の主人公Yui Jennyさんはバイオリン楽器を担当している。(公式YouTube概要欄より一部引用)。

ゲスト:中村恵久さん(以下中村)
聞き手・編集:日本聖書協会広報部(以下JBS)


JBS:作品に「イザヤ書43章4節」を選んだ理由は何ですか?
中村:まず箇所ありきではなく、取材対象者(Yui Jenny)の言葉を大切にしたいというところからスタートしました。

JBS:なぜYui Jennyさんに焦点を当てようと思ったのでしょう?
中村:彼女はTHIRD PLACE WORSHIP(※)で一緒に演奏している仲間です。メンバーの中で一番うれしそうに賛美する姿を見ていました。証(あか)しを聞き、この子の話をもっと聞いてみたいと思いました。

JBS: 3分間で一番伝えたかった事、難しさを感じた点はどこでしょうか?
中村:僕らが伝えたいということより、取材したYuiさんの「昨年受洗した妹に面と向かっては恥ずかしくて言えないことを伝えたい」という言葉を聞いて、この機会に妹へのメッセージを送れたらいいなと思いました。

3分間に収めるために削らなければならないところが正直結構あったので大変でした。もっとディープなエピソードを残すか・残さないか、より主人公の生育について触れるか・触れないか、作品の核心は親への愛情か・妹へのメッセージか、などギリギリまで迷いました。また、テレビ制作は説明的なパートが多いですが、今回の映像制作では照明や物撮りなど、各カットの中で表現することを心掛けました。

JBS:聖書動画コンテストは前から知っていましたか?
中村:日本聖書協会の聖書動画コンテストについては数年前から面白い取り組みだなと思っていました。今回、角谷隼人くんから誘いを受け、参加しました。

JBS: 見る人の背景については意識されましたか?どのようなことを心がけましたか?
中村:THIRD PLACE WORSHIPだけでなく、僕たちは二人(中村・角谷)ともテレビ番組「ライフ・ライン」(様々な分野でキリスト教信仰を持って生活しているクリスチャンの人生の証しや考え方を紹介するテレビ番組。制作元:一般財団法人太平洋放送協会)のディレクターをしています。

ゲストにお話しいただく朝の30分番組の視聴者はノンクリスチャンが大半で、クリスチャン向けの番組としては作っていません。一般的な言葉で、共感しやすい言葉で、わかりやすく、感情移入しやすいようにはどうすればいいか、誰が見てもわかりやすい映像にすることを心がけています。

普段のクリスチャンとしての自分とは違う「自分」を用意し、細かいところですが、ゲストにはクリスチャンワードを番組の冒頭から使用しないように心がけてもらい、例えば「みことば」を「聖書の言葉」と言い直してもらったりしています。番組を見て、教会に行ってみようと思ってもらえることがゴールなので、教会生活はどういうものなのかを、ある程度見せられたらいいなと思って作っています。

ただ30分の番組では、ワンショット・ワンショットになかなか時間をかけて撮ることができないので、もう少し短い時間で伝えたいことを伝えるものができたらいいよねというところが今回の聖書動画コンテストに応募した動機です。CALM Creative teamはクリスチャンのクリエイターやエンジニアのコミュニティを立ち上げているので、そこでメンバーを募り、参加しました。

JBS:中村さんと角谷さんのお二人で作品の方向性が異なることはありませんでしたか。
中村:普段一緒にテレビの製作をやっている二人なので、ズレというか、そこまで大きな方向性に違いはなかったです。ただ、3分で何をどう見せるか、メッセージとして何を残したいか、どういう人が見るのか、などを考えながら進めました。じゃあメッセージはこれ、それを伝えるにはどういう順番がいいのか、やっぱりこれはなしにしよう、足りないから追加でこれを撮りに行こう、という風に進めていきました。

JBS:自分たち以外の受賞作品を見て、改めて思うことはありましたか。
中村:今回、応募作のBGMで、僕たちTHIRD PLACE WORSHIPの音源「詩編100」を使ってくれた明治学院高校の方々とアワード中にダイレクトチャットでやり取りをしました。生徒の一人が「自分はノンクリスチャンだけど響くものがあった」と感想を伝えてくれました。

僕たちの音楽が、自分たちが想定していない形で視覚化されたこともうれしかったです。コロナの状況が開ければ、別の形で若い世代とコラボレーションする可能性を感じました。現に、CALM Creative teamでは、音楽演奏、企画開発、撮影の段取り、プロモーション、映像技術の分野の専門スタッフがいるので、若い世代に実践指導するクラウドファンディングイベントを開催したいね、というミッションを話し合っています。

JBS:改めて自分たちの作品を振り返ってみていかがですか。
中村: 3分間で、とにかくひとつでもメッセージが伝わればいいなと思っていました。人それぞれの証しは素晴らしいものがあるので、本人の思っていない意図で編集しないように、演者に確認しながら進めました。演者とコミュニケーションしながら進めると、良い作品になるのではないかと思っています。

「神様があなたを愛している」「私は私でいいのだ」「私には価値があるのだ」という希望のメッセージをわかりやすく伝えるため、セリフを言い直してもらったり、やりとりを重ねた部分もありました。

JBS: ご自身のバックグラウンドについてもお聞かせいただけますか?
中村:僕の父は牧師です。僕自身はバプテストのバックグラウンドがあり今は日本基督教団に属しています。教会から精神的に離れて自分の人生を見つめなおす期間もありました。これからどういう風に、何を軸に生きていくのか悩み、世の中に合わせて生きることにズレを感じていた時もありました。

自分の人生を見つめ直し、5年ぐらい前にバンドマン、テレビの世界を経て、教会に戻って来ました。そういう視点を得て、誰がどう見てどう伝わるのか、を映像制作の現場でより考えるようになったように思います。

クリスチャン的な生き方の究極は「神がどう見ているか」だと思います。奉仕活動に携わるようになって、そこの視点も分かってきました。今は、基督教団、福音派、ペンテコステ派、様々な方々と仕事をさせてもらっています。「召し」「重荷」「聖霊」など、言葉一つとってもクリスチャンによっても捉え方に違いはありますが、同じ視点を持ちながら一緒にやっていくことは、自分自身の信仰の成長にもつながっていると思っています。こういう場所を与えられて、本当にありがたく、高校生にも「一緒にやろうよ」と言いたいです。

JBS:一緒に制作した角谷隼人さんについて。
中村:角谷くんは納得したカメラの絵作りを撮りたいという思いで、スポットライトなどの照明を意識して撮影してくれました。ある程度お互いいいねと思えるものが撮れたと思います。彼の存在なくしては作れなかったです。演者のYuiさんと共に臨んだ東久留米市でのロケでは、蚊取り線香を10本ぐらい焚きながら撮影したのが良い思い出になっています。

JBS:JBS主催の聖書動画コンテストは来年の第7回が最終回です。これから動画制作にチャレンジしてみようと思う人に向けて一言お願いいたします。
中村:まずはやってみることが大事かなと思います。受け手ではなく作り手になったときに見えてくるものはあるし、作ってみないとわからない景色があります。ぜひチャレンジしてほしいと思います。

JBS:最後に、あなたにとって聖書とは?聖書の言葉とはどのような存在ですか?
中村:力が与えられるもの。時に自分自身を刺し貫くもの。自分の生活を反省させられるもの。神様がどんな方なのか知れるもの。僕たちクリスチャンはこれから神の姿に変えられていく存在で、そこに希望をもって生きていけることは素晴らしいと思います。

僕にとってはなくてはならない、生きていくための指針で、神から愛のメッセージだと改めて思います。