旧約聖書
「旧約聖書」という呼び方はキリスト教において「新約聖書」と対応して名づけたもので、ユダヤ教においてはこれを「ト-ラ-(律法)」「ネビイ-ム(預言者)」「ケスビ-ム(諸書)」と呼んでいる。この3区分は聖書の成立順序と関係している。「律法」は創世記から申命記までの5書で、ユダヤ人はこれをモ-セが神から授かった律法の書として尊重し、最も早くおそらく紀元前5世紀に編集された。これらは特定の著者により書き下ろされたものではなく初期の多様な独立した記述が次第につなぎ合わされていくという長い過程を経て編集されていった。「預言者」はヨシュア記から列王記まで(ルツ記を除く)の「前預言者」とイザヤ書からマラキ書まで(哀歌、ダニエル書を除く)の「後預言者」に分かれる。このうち「後預言者」がいわゆる預言者である。ネビイ-ムが編集されたのは紀元前200年ごろと考えられる。
「諸書」は「律法」「預言者」以外の書物で、ある書物は早くからその価値が認められていたが、雅歌やエステル記などは聖書正典の中に入れるべきかどうか評価が定まらなかった。「諸書」を含めて聖書正典がユダヤ教団において決定されたのは紀元1世紀の終わりである。ヘブライ語聖書に入れられなかった幾つかの書が「70人訳聖書」に収められたが、それはキリスト教会にも受け入れられ「旧約聖書続編」となっている。
写真の説明
羊皮紙に書き写されたト-ラ-の巻物(18世紀)ユダヤ教の会堂には今日でもト-ラ-の巻物が置いてあり、礼拝のときに朗読される。(写真提供/横山 匡)
新約聖書
新約聖書の書名リストを記した最古の資料によると2世紀のロ-マ教会で現在の聖書の大部分が認められていた。4世紀に東方教会のアタナシオスが現在の27巻を受け入れた。西方教会では4世紀末に北アフリカのヒッポにおける会議で新約聖書正典を確定している。
翻訳史
翻訳史01|ザ・バイブル
聖書を表す語として知られているバイブルは、ギリシア語のビブリオンに由来し、書物を意味する…
翻訳史02|聖書は何語で書かれたか
旧約聖書はヘブライ語で記されている。ごくわずかの部分は…
翻訳史03|聖書の成り立ち
「旧約聖書」という呼び方はキリスト教において「新約聖書」と対応して名づけたもので…
翻訳史04|聖書は写本で伝えられた
われわれに伝えられた聖書の本文はすべて写本によるもので、聖書の原本というものは…
翻訳史05|ギリシア語の写本
ギリシア語写本は大文字写本Uncialと小文字写本Minusculeとに大別される…
翻訳史06|パピルスやヴェルムに
パピルス紙はエジプトにおいて紀元前3000年ごろ考え出された…
翻訳史07|翻訳された聖書 古代から中世
古今東西の文献の中で、聖書ほど古くから今日に至るまで多くの翻訳がなされてきたものはない…
翻訳史08|すべての人々の手に聖書を 近現代の聖書翻訳
ラテン語で書かれた聖書を理解できるのは一部の者だけだった…