言葉と音と文字
テレビの首都圏ニュースでは、たびたび銀座和光を中心とした交差点の映像が映し出されます。その映像には日本聖書協会の聖書館ビルのお隣である「教文館」の白地に緑の看板も見えます。その手前にある紫色の看板、それが「山野楽器」です。山野楽器は1892(明治25)年創業、関東大震災と東京大空襲で二度、本社ビルの建物を消失しました。その試練に耐え抜き、戦後復活を遂げ、今日もなお銀座を代表する老舗の一つです。音楽関係ビジネスの百貨店と言ってよいと思います。
その山野楽器は、コロナ禍前の2019年7月に音楽CDやDVDの売場を1階から4階に移転しました。そして建物の地下1階から2階を改装し、2020年9月に『GINZA 456 Created by KDDI』というコンセプトショップを新たにオープンしました。最新の5G体験ができるフロアには多くの来場者が集まっています。音と映像の媒体がCD/DVDの時代から、VRやARをベースとする5G時代へと移行している最中の象徴的な出来事です。この種の産業は今後も革新的に変化していくことでしょう。
音楽産業は時代と共にその媒体と機器を変化させてきました。音声録音の歴史は発明王トーマス・エジソンの蓄音機「フォノグラフ」にさかのぼります。そこからレコード、カセットテープ、CD、MD、MP3、インターネット配信(ダウンロード/ストリーミング)というように変化しています。高度経済成長期には「ジュークボックス」と呼ばれるものもありましたが、映画や古い映像の中でしか知る機会はないかもしれません。SONYが開発したポータブル・オーディオ・プレーヤー、WALKMAN®️は世界的大ヒットとなりました。それは日本経済の繁栄の象徴でした。デジタル化で最も大きな変化を遂げているのがこの業界だと言えます。
出版業界と音楽業界の関係はどのようなものでしょうか。出版物とは「情報を文字で伝える」ものであり、印刷した書物、電子媒体をも含まれます。「情報を音(声)で伝える」ということの商品化の一つが、今注目されている「Audibleオーディオブック」などです。過去を振り返ると、そもそも情報の多くは「口伝」形式で伝えられていたことに行き当たります。聖書も、朗読されたものを人々が聴くことが最初の姿でした。それが活版印刷の発明で印刷/出版の産業が生まれたのです。古くから言葉、音(音源/曲)、文字(本)とのつながりは深い関係の中で相互に影響し合いながら発展してきたということを改めて教えられます。
「彼らは神の律法の書をはっきりと朗読し、また意味を明らかにしたので、人々はその朗読を理解した。」(旧約聖書・ネヘミヤ記8:8)
「それゆえ、信仰は聞くことから、聞くことはキリストの言葉によって起こるのです。」(新約聖書・ローマの信徒への手紙10:17)
さて、2018年12月に出版された『聖書 聖書協会共同訳』は、現在その朗読の音源製作が進んでいます。2023年3月を完成目標としていますが、同時にその製品開発を進めています。音源をCDなど、形あるもので所有し聴きたいという要望があり、もう一方には、スマートフォンやタブレット端末でいつでも気軽に聴けることを望む世代があります。無料・低額の提供を求める声がありますが、それが本当に持続可能かというと否です。他国でも著作権の問題や資金難によるサービス停止などの事態が生じています。そのような多くの課題があることをご理解いただければ幸いです。
新型感染症の終息はまだ見えず、依然として教会での礼拝や活動が自由にできない状況下にあります。いろいろな制限で我慢を強いられている方も多くいらっしゃることでしょう。私たちは目や耳から明るい真の希望のメッセージを必要としています。活力を得て、一人ひとりのエネルギーを動かして何かに投じたいと思っています。私たちに必要な愛と忍耐のためにも、神よ、あなたの御声を聴かせてください。
主の恵み
2022年3月1日
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