あなたの正義によって

2月24日、ロシアによるウクライナ軍事侵攻が始まりました。米国や西欧諸国の資本主義国家とソビエト連邦を中心とする旧・共産主義国家の間では、冷戦以降さまざまな危機や紛争があり、1991年のソ連崩壊後の体制変換を経てなお東西対立が継続してきました。今回のウクライナ危機は過去を通じて最も大きなインパクトを世界に与えるものとなっています。報道ではほぼ毎時のトップニュースとして扱われ、核による第三次世界大戦勃発の可能性すら危ぶまれています。

ハンガリー生まれのアメリカの地政学者で、国際情勢ストラジストであるジョージ・フリードマンは、ベストセラー『100年予測』シリーズを2009年より出版しています(邦訳、櫻井祐子訳、早川書房、2014年-)。その最初の書で今日のようなロシアの動きを想定し、ヨーロッパで動乱が起きるであろうと警告していました。フリードマンはこう語ります。「人類の歴史(特に西欧)を概観すると、約80年周期の『制度的サイクル』と約50年周期の『社会経済的サイクル』が存在する」と。その二つの周期が重なる大転換期が2020年代に訪れると予知していました。特に2025-2030年に米国の将来に対して、これまでで最も厳しいものになる可能性が高いと警戒しています。そして構造的な大きな変革が起きるであろうというのが彼の主張です。興味のある方は彼の著書を調べてお読みください。

世界は、ここ2年数か月、新型コロナウイルスによる感染症の問題で一色でした。私たちの日々の関心事の枠外で、東欧において国家間の歪みが形成され、爆発寸前であったという事実に驚きと恐ろしさを感じます。私は政治や地政学の専門家ではないので、大それたことを論じることはできませんが、「歴史は繰り返す」ということを思い巡らしています。フリードマンの前提には「戦争はなくならない」という認識があります。確かにそうかもしれません。

人間は二人以上存在する時、必ず争いが起きる。一方の主張(正義)ともう一方の主張(正義)がぶつかる。創世記4章のカインとアベルの出来事以来、私たち人間は殺し合いの歴史を辿っている。長きにわたって戦争は「人間の愚の骨頂」と、多くの思想家・文学者・人道主義者たちが論じていても、その過ちを再び繰り返す。そんな悲哀を感じている方々が多くおられるのではないでしょうか。

「主よ、あなたのもとに逃れます。私がとこしえに恥を受けることがないようにしてください。あなたの正義によって私を救い出してください。」(旧約聖書 詩編31:2)

提供UBS:モルドバ聖書協会による緊急支援活動
提供UBS:モルドバ聖書協会による緊急支援活動

今回のウクライナへの軍事侵攻はとても深刻な現代社会の現実です。この戦争の悲劇がどれだけ拡大するのか、どれだけ犠牲者を出すのか、どれだけ私たちの生活に影を落とすのか、わかりません。聖書協会世界連盟(UBS)内ではまずキリスト者が祈りをささげ、献金を集め、支援活動を開始することを確認しました。ウクライナ周辺の国々には複数の聖書協会がありますが、それらはまだ小さな組織であるため迅速な対応が十分にできません。そこで、英国聖書協会の経済的・人的支援を受けながら援助活動を進めています。それをUBSの仲間たちで支援することを始めました。私たち日本聖書協会も、募金部を中心にして祈祷・募金・支援活動の推進を始めました。具体的な活動はウェブサイトやSNSなどを通じて配信いたします。

提供UBS:ウクライナのソフィア大聖堂における祈祷会
提供UBS:ウクライナのソフィア大聖堂における祈祷会

この件で一つ付け加えるべきことがあります。UBSのミーティングで指摘があったことです。それは、ロシアの中にもこの出来事で苦しむ仲間たちや多くの民衆が存在する点についてでした。聖書にも記されているように、国の為政者の暴力的統治と過ちの犠牲者はどちらの側にもいることを覚えて、祈りをささげたいと思います。主の平和が全地を覆いますように。皆さんも共に祈りの輪に加わってくだされば幸いです。

ウクライナのための祈りの時

英国聖書協会(BFBS)主導の祈りの時があります。毎晩ロンドン時刻・午後3時、ウクライナ時刻・午後5時、日本時刻・夜11時。詩編31編の朗読と祈りをささげています。

日本聖書協会(JBS)もSNSで最新情報を配信しています。

主の恵み

2022年3月23日