宇宙が身近な時代に

1968年、スタンリー・キューブリック監督・脚本のSF映画『2001年宇宙の旅(原題:2001: A Space Odyssey)』が公開されました。翌1969年、アメリカ航空宇宙局(NASA)はアポロ11号で史上初めて人類の月面着陸に成功していますが、その以前1960年代半ばから、この映画の制作は始まっていました。2018年にデジタル・リマスター版が出ましたが、改めて観るとまるで現在の国際宇宙ステーションの活動を予見していたかのようなリアルさです。映画公開から約50年の歳月が過ぎましたが、それが短いか長いかは、その事実をどう見るかによって変わるでしょう。

かつては東西の超大国同士の威信をかけた熾烈な競争の下に発展を遂げてきましたが、宇宙開発の夢と希望は世代を超えて受け継がれてきました。2021年7月、ついに民間企業による宇宙船飛行の成功に辿り着きました。ヴァージン・グループ会長のリチャード・ブランソン率いる宇宙旅行ビジネスを請け負うVirgin Galactic 社は、7月10日に6名の搭乗飛行を、またAmazon創業者のジェフ・ベゾスが設立した宇宙開発企業Blue Origin社は7月20日に4名の搭乗飛行を行い、それぞれ民間人を乗せたテストフライトを成功させました。私はどちらもYouTubeのライブ配信を見、今回のミッションは短い飛行時間ながら人類史における大きな一歩であったと思い、感動しました。この出来事は大きな変化を生じさせることでしょう。

民間航空機で人々が自由に旅をするようになり、さまざまな国々への移動が可能となり世界が近くなったように、宇宙が私たちの身近になる時代が来るでしょう。『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』(NewsPicksパブリッシング、2020年)では、人類の宇宙への移住競争が始まるであろうと予測しています。2020年から2030年までの10年ではどれほどの「加速」が起きるのか、私たちキリスト教会はどのように備えるべきか、そんな話題がチラホラと聞かれるようになりました。

あなたの指の業である天を、あなたが据えた月と星を仰ぎ見て、思う。
人とは何者なのか、あなたが心に留めるとは。
人の子とは何者なのか、あなたが顧みるとは。
あなたは人間を、神に僅かに劣る者とされ、栄光と誉れの冠を授け
御手の業を治めさせ、あらゆるものをその足元に置かれた。
(旧約聖書 聖書協会共同訳:詩編8:4-7)

「被造物の管理者」として、神は人間を創造されました。罪によって大きく歪められているものの、管理者としての働きは残っています。遺伝子工学から宇宙工学の分野に至るまで、私たち人間はどのようにその開発を推進し、理解し、将来に備えるべきなのか。自然科学の事柄を、どのように子供たちに聖書を基礎にして教えるべきなのか。キリスト教会は宇宙論に関して無頓着であったことを反省し、急いで取り組む必要があることを考えさせられます。

2021年8月、日本はコロナウイルス感染症の感染拡大に翻弄されながら東京オリンピック・パラリンピックのホストを務めています。高温多湿のなか連日熱戦が続いており、1年間の延期にも関わらずこの大会に標準を合わせてきたアスリートのパフォーマンスに励まされています。その中で、民間企業による有人宇宙船の試験飛行の成功と、それに伴う大きな課題も覚えてほしいと思いました。

主の恵み

2021年8月1日